ローテク

 かんどり舟の修繕。
 かんどり舟は、吉野川を代表する漁舟。鮎漁をするために、浅瀬でも機動力を発揮する構造になっている。
 
 いつも使っている舟の、板張りの隙間が広がってきていて水漏れするので、元川漁師のバンドーさんに習って、昔ながらのシュロ縄を使って直す。
 シュロは昔、土塀の中に防水の役割を果たす為に貼られていた。シュロの繊維はよく水をはじく、天然の防水材なのである。日常で必要なものであったから、昔はどこの家の庭にもあったそうだ。
 
シュロ縄工程
①まずはシュロの木から、皮をはがしてくるところから。河原に生えているシュロを見つけて、のこぎりでうまいこと皮をはがす。
②一晩水につける(やわらかくするため)。
③木槌でたたく(同じくやわらかくするため)。
④繊維ごとにバラバラにする。
⑤作りたい縄の太さにあわせて、束を作る。
⑥束を2つ手に持ち、縄を結う。
 
 ⑥の過程はひじょうに難しい。テンションをかけておかなければいけないし、強く手と手でこすり合わせていかなければ、縄が頑丈にはならない。束が短くなると、あらかじめ作っておいた束を継ぎ足していくテクニックも必要だ。バンドーさんの奥さんに「なんや、縄も結えんのか。」とあきれられてしまった。しばらく試行錯誤するうちに、なんとか形らしくなってきた。
 縄の太さは、修繕する箇所の隙間の大きさを見ておいた上で調節する。
 
舟隙間埋め工程
①板と板の隙間をきれいに掃除する。
②隙間の太さにあわせて縄を打ち込んでいく。打ち込むのには古びた“のみ”がよい。
③縄は一本だけではなく、それ以上入らなくなるまで何本でも打ち込む。
④表面にはみ出した繊維をきれいに掃除する。
 
 シュロは水に浸かると膨張する。隙間いっぱいに詰め込んだシュロ縄は水の中でさらに膨らみ、隙間を埋めてくれる。しかしそれでも完全に水が入ってこないという訳ではなく、まあある程度の水漏れは木の船である以上、問題ではないということだ。これは現代のテクノロジーに対して、あらゆる意味で示唆を与えている。ある程度の隙間や、遊びを許容できる考え方。テクノロジーだけではなく、社会全体にもいえることかも知れない。
 漁師さんたちは漁期の終わりに毎年必ず、この修繕を行なっていた。許容できる綻びを、身の周りにある素材で繕う。それは特別なことではなくて、かつては生活の中で当然の営みだったことだ。
 
 次々に日常から失われていってしまうローテクの知恵と哲学を、少しでも受け継いでいきたいと思う今日この頃である。
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